TOP OF FORTY FOURのある生活

無添加手巻きタバコTOP OF FORTY FOURを愛するおっさんの日々

長い長い旅

前号ではBARで白人が吸っていた世界一の葉っぱのタバコを一本、ご相伴にあずかる事に成功し、その味わい深さとクセの無い美味さに心を奪われた後ウィスキーを煽って世界一の葉っぱを手に入れる算段をしているところまで書いた。そう頭の中がグルグル回っているんやけど良い考えが思いつかない。なんせあの白人とは面識もないし、誰かの友人でもないんや。そう考えている間にも時間は刻々と過ぎていきいつ何時奴は帰ってしまうかもしれない。しかしあの白人のサークルに一人飛び込んで世界一の葉っぱについて質問をするのは気が引けた。

白人との付き合い方で一番重要なことは(距離感)である事をワシは長い海外暮らしですでに学んでいたんや。んーーどう説明したらええかな・・・・例えば最初に誰かの紹介で出会って挨拶するとなるわな、たいていの白人は実にフレンドリーや。こっちが退屈せんぐらいに話題を振り投げてくれるし、仲間たちに日本人の友人が出来たぞ!なんて気さくに紹介してくれ、仲間たちもコンニチワーなんてあっという間に和気あいあいの雰囲気があっという間に出来上がる。

難しいのは次回に出会った時なんや。違うレストランやBARで先日知り合った白人と出会ったとしようか、当然顔見知りとしての挨拶は前回と変わらず実にフレンドリーで満面の笑みを持って迎えてはくれるわい。でも今回は彼と一緒にいる仲間に紹介する訳でもなく最初の挨拶以降は実に他人行儀。おそらくは誰も入ってほしくない深い仲間だけの集まりであろうと推測される。

まぁそのように入り口は実にフレンドリーであっても、確実にここまでは入っていいけどここから先はご遠慮願います。ってちゃんと書いてある。もっとも家族ぐるみでパーティに誘われた場合は違ってて本当のフレンドになりましょうって誘いである事も多いんや。だからあの中に飛び込んでいくのは簡単ではない、間違いなく。

ひとつ幸運だったのはワシ等の席よりも奴等の席は店の奥にある事やった。世界一の葉っぱのタバコを一本巻いてくれたあの白人がもう一度タバコを吸う場合、必ずワシ等の席の前を通る。そのチャンスにかけるしかない!ワシは心を決めた。そうなると人間不思議なものであっという間にシナリオは作成され、一緒に座ってるフランス人の仲間に協力を要請したんや。フランス人ってのは欧州の中でも個性的というか、独特の存在感を持つプライドの異常に高い民族であり、そのフランス人が協力してくれればあの白人から世界一の葉っぱについての情報を聞き出す事が可能と思われた。

シナリオはこうや。あの世界一の葉っぱの持ち主がタバコを吸いに外に出て、奥のカウンターに戻ろうとするところを狙って、連れのフランス人にやぁ!さっきは日本人に素晴らしいタバコを教えてくれたんだってね。こいつは一日80本もタバコを吸うヘビーだから心配したんだよ。ちょっと一杯おごらせてよ。って連れのフランス人に誘ってもらう。ワシは横で満面の笑みを浮かべてウェルカム!ってやるだけ。連れに聞くとあれはオランダ人だと思う。あいつらは頑固だけどたぶん大丈夫と太鼓判を押してくれた。

さて!そのチャンスはやって来た。今度はあの白人ともう一人、二人だけで外でタバコを吸って中に戻ってきた。先にわしが立ち上がり、さっきはありがとう!至福の瞬間だったよ。って声をかけ、続いてシナリオ通りにフランス人が見事にオランダ人をワシ等の席に座らせる事に成功した。酒が来るまで欧州人同士の会話がうまく運び、奴も上機嫌で話してる。

酒が来てチェーーース!とグラスを合わせた後、切り出した。ワシはタバコが大好きで今までに実に様々なタバコを吸ってきたけど今日貰ったタバコは格別だった。美味くて深くて、クセがない。素晴らしい。でもどうして手に入れるのが困難なの?重苦しくならないように気を使いながら質問を軽く振った。オランダ人ってのは欧州では頑固者で通っていて、こういう質問が気に入らなければろくな返事もしない反面、自分がこだわりを持ってる話題になると実に良くしゃべる。どうやら彼は後者のようで、そこから彼世界一の葉っぱに対するウンチクが始まった。

彼のウンチクを全部書くと今夜は徹夜しなければならないほど長かったんだけど、要約するとこうやった。

1.自然のタバコ葉を吸おうとする一本のタバコから取れる一番良質な葉の部分だけを      乾燥させて刻まなければならない。

2.世界各国、タバコビジネスは国家そのものが関与しているため農民は売ってくれない。

3.万が一農民が最高の葉っぱだけを売ってくれたとしても残りの部分を売る事が困難。

4.世界各国のタバコ製造会社がたくさんの添加物を混ぜている最大の理由は、辛くてそのままでは吸えないタバコ葉や茎の部分も商品化するため。

全部は覚えていないがこういう話を何度も説明してくれたんや。ワシは深く理解した。コストがかかっているのも当然だ。だから高いお金を支払っても買うは不可能なのだろうか?と質問をしてみると、彼はゆっくりと大きく首を横に振った。今、オランダの仲間が協力してくれる農家と交渉をして、ほんの少量がオランダの愛煙家に送られているけどみんなが待っている状態なんだ。銭かねの問題じゃないんだ。悪いな!と彼は立ち上がり、その代わりと言って巻く前の世界一の葉っぱを数本分持って来てくれたんや。

嬉しかった・・・・・たった数本分とは言え世界一の葉っぱがワシの手中にある。その事だけで飛び上がるほど嬉しかった。結局、その日はその世界一の葉っぱを吸う事をせず、翌日匂いを嗅いだり、写真を撮ったり、観察したうやうやしく丁重に巻き上げ、また至福の瞬間を味わってみると、何と!昨日BARで吸った時よりもさらに美味い。言葉では上手に言い表せんが、美味い。それは自分が使っているフィルターや巻き紙の品質や慣れからなのだろか分からないけれど、こんな美味いタバコを吸った経験は一度もなかった。

この日から世界一の葉っぱを求めてアジア中、旅をすることになろうとはこの時点では知る由も無かったんや。以下次号。